債券ETFも株式ETFと同様に様々なインデックスがあり、投資家は目的とリスク許容度に応じた債券インデックスの選択が必要です。今回の記事は主な債券ETFを俯瞰的に眺めて、多種多様な債券ETFのそれぞれの立ち位置を明確にすることが目的です。
俯瞰するインデックスの候補は、総合債券ETF・クレジット債券ETF・米国債ETF・社債ETF・モーゲージ債ETF・ジャンク債ETF・新興国債券ETFです。
債券ETFの値動きについてざっくりおさらい
債券価格の価格変動要因は以下の2点です。
- 長期金利=実質金利+期待インフレ率
- 信用リスク
債券の値動きリスクをこの2つに分解することで、意図しない価格変動に戸惑うことはぐっと減らせることが期待できます。債券ETFも値動きが大きいものや、株式資産と同じ動きをすることもあることには注意が必要です。
また、債券投資でキャピタルゲインを狙う目的も場合によってはあることは見落としてはいけません。債券はなにもインカムだけの為の資産ではないのです。

長期金利の変動による債券価格の変動
長期金利とはお金が回るだけで発生する経済の資金コストです。このコストが高くなるほど、家を買うにもコストが増加し、設備投資にもコストが増加します。長期金利が高くなることで、固定利付の債券は価格が下落、長期金利が下落することで債券価格は上昇します。
全ての債券のベースがこの長期金利であることが重要です。
信用リスクの増減による債券価格の変動
発行元の破綻懸念等の信用リスクが増減することで債権回収に影響が出ることから、債券価格変動の要因となります。破綻懸念が大きくなれば債券価格は下落し、信用リスクが小さくなれば債券価格は上昇します。
ちなみに米国債は無リスクなのでこの信用リスクで変動することは滅多にありません。
信用リスクとは上乗せ利回りのこと
ざっくりと信用リスクと書いていますが、安全資産である米国債の金利に対して上乗せすることが出来る利回りを指します。例えば社債であれば発行企業の破綻リスクであったり、新興国債券であればデフォルトのリスクであったり、そもそも残存期間が長ければ時間のプレミアムであったり、モーゲージ債であれば期限前償還のリスクだったりとです。
この信用リスクの大きさに基づいた上乗せ利回りは信用スプレッドと呼ばれたり、クレジットスプレッド等と呼ばれたりします。債券投資とは一般的に米国債への投資を指しますが、低金利が浸透した現在では様々な信用リスクを上乗せし、米国債投資を上回るリターンを得ることが出来ています。
金融工学が発達したおかげですね。ただし、織り込まれていた信用リスクが想定以上に大きくなるような信用不安があった場合には価格は下落します。気を付けて下さい。
その点で言えば米国債の信頼性はピカイチです。どんなに破滅的な不況が訪れても米国がデフォルトしない限り利子収入が保証されますからね。本当かな?wただ、米国債が安全資産だという前提がグローバル社会で通底しています。
そして高利回りに惹かれてしまう方は必ず、どこに信用リスクがあるのか?を確認することが重要です。米国債と同程度の信用力で米国債より利回りが高い商品は基本的にありません。そんなものがあればあっさり米国債は暴落します。
高利回り商品で良く目につくのはHYG・PFFの様なハイイールド債と優先株式です。どこにリスクが有るかわかりますか?
リスク・リターンの関係
一般的な感覚と同様に債券もリスク・リターンに相関があり、リスクが大きければリターンも大きい傾向があります。ただ、今回の記事は債券ETFのリスクに基づいた選定なので確認するだけです。
なんとなく右肩上がりなことがわかります。TLTとEDVは群を抜いて激しい値動きですね。この近似線の左上がなんとなく、リスクリターンが優れてるのかな、ぐらいの認識を持って頂くと良いですね。
債券ETFの性質を俯瞰的に眺めてみよう
長かった前振りが終わり本題です。金利リスクの感応度を示したデュレーションと、保有債券の平均格付の2つの切り口で見てみましょう。尚、デュレーションは長期金利の変動に対するETF価格の変動率を示します。金利リスクと信用リスクで俯瞰してみようという魂胆です。
- 右上:信用リスクは取らずに金利リスクを最大限に取ることで高いリターンを狙う。
- 左中:信用リスクも金利リスクも程々に取る、リスク・リターンに優れた総合債券。
- 左下:信用リスクを積極的に取り、比較的高いリターンを狙う。
- 横軸がデュレーションで長期金利が1%上昇することで何%下落するかの目安になります。右に行くほど金利リスクが大きくなり、EDVは25%下落するとされています。
- 縦軸が信用格付けです。勿論最高ランクは米国債で、下に行くほど信用力が無いジャンク債となります。
信用リスクが大きい程、スプレッドが大きくなり利回りが高くなります。この信用スプレッドは信用リスクが改善されることで縮小し債券価格が上昇します。まるで株式投資みたいですね。ただ、信用力が低い債券は投資家が現金化を急ぐような状態でバナナのように叩き売りされます。気をつけて下さい。
債券ETFの購入前には利回りばかりに注目するのではなくどこにリスクがあるのかを確認することが重要です。右側にあれば長期金利の影響を受けて、下側にあれば経営環境のリスクを引き受けることになります。
もちろん、長期金利は経営環境のコストに直結するので長期金利の上がり過ぎには注意が必要です。
1.信用リスクは取らずに金利リスクを最大限に取ることで高いリターンを狙う債券ETF

2.信用リスクも金利リスクも程々に取る、リスク・リターンに優れた債券ETF




3.信用リスクを積極的に取り、比較的高いリターンを狙える債券ETF

新興国債券はここに入りますね。
債券ETFを選択する
長期金利下落にギャンブルする
2018年のおすすめETFの一つにEDVがあります。これは長期金利下落に賭けるトレードです。なのでグラフの右に行くほど長期金利に対して大きく反応することからEDVを選択しました。FRBの金融引締めが終了し、再び量的緩和を再開する前に購入すべきETFの一つだと思っています。
もしくは2018年中に買う機会が訪れない可能性もあります。
その時は経済成長率と長期金利がぐんぐん伸びていることになります。本当の資産バブルはこれから始まるのかもしれないですね。知らんけど。

信用リスクの低下にギャンブルする
景気拡大が継続すればお金は益々利回りを求めて動き出します。その際には資金繰りに苦労しているジャンク企業にもきっと恩恵があるはずです。信用リスクが低下すればHYGのようなハイイールド債権の価格は上昇します。もちろん。投資適格社債も上乗せスプレッドは小さいですが同様です。


長期的な金利上昇に備えた選択
過去30年続いた債券の上昇局面が終了した可能性があります。金利のリスクを抑えた債券ETFとしてはモーゲージ債が最有力です。米国住宅ローンに特化することで金利リスクが低く、信用力が高く、利回りが高い三拍子揃った夢のような特徴を持つ債券です。

選択をしない選択
勿論、何にも賭けない場合は債券においても分散をお勧め致します。米国債のみでは長期金利が継続して大きく上昇する場合に大きな問題があります。だからといって信用リスクの高いハイイールド債のみでは信用不安時に暴落する為、損切を迫られかねません。
選択をしない選択をすることも投資戦略として重要です。そんな時には総合債券ETF・クレジット債券ETFがおすすめです。特に米国債を含めるかどうかが、総合債券ETFかクレジット債券ETFの選択のポイントになります。


債券ETFの目的・リスクの所在を明らかにすることが肝要
債券ETFを選択する際には目的・リスクの所在を明らかにすることが失敗しない為の重要なポイントだと思っています。インカムが欲しいのか、株式とのアセットバランスを整えたいのか、キャピタルゲインを得たいのか、どこのスプレッド縮小を狙うのか、投資対象は分散する必要があるのか、、、そんなことは考えないで分散するのか、ですね。
今回は金利リスクと信用リスクの2つの切り口から債券ETFの選択について紹介させて頂きました。十人十色の投資ですから、是非腹落ちできる債券ETFが見つかると良いなと思っています。
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